金子みすヾさん


金子みすヾさん(本名 金子テル)の詩がとでも大好きです。
私がみすヾさんと出会ったのは、「空とかあさま」という(斎藤由貴さん主演)の舞台に
良様が出演されると聞いて、観劇すると決めた時からです。
それまでみすヾさんの存在を知りませんでした。
実際いらした方だと聞いて、舞台を観るために、みすヾさんの事を調べました。

初めて読んだ詩が「私と小鳥と鈴と」でした。
そっかぁ〜、そうだよ!!と一言では言い表せない、
目からうろこが落ちた!という表現がぴったりでした。
みすヾさんのこともっと知りたい!と思って、
色々な本を読んだりしました。
ここに掲載したのは、ホンの一部です。

みすヾさんは512編の作品を残されました。
私はいつかみすヾさんの住んでいた街「仙崎」に行って、
みすヾさんの世界を感じてみたいなと思っています。

みすヾさんは彗星のごとくあらわれ、彗星のごとく去っていった。

私と小鳥と鈴と


私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないいが、
飛べる小鳥は私のやうに、
地面を速くは走れない。


私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のやうに、
たくさんな唄は知らないよ。


鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

みんなすきに



私は好きになりたいな、
何でもかんでもみいんな。

葱も、トマトも、おさかなも、
残らず好きになりたいな。

うちのおかずは、みいんな、
  母さまがおつくりなったもの。  

私は好きになりたいな、
誰でもかれでもみいんな。

お医者さんでも、烏でも、
残らず好きになりたいな。

大漁



朝焼小焼だ
大漁だ
  大羽鰮(おおばいわし)
大漁だ。


濱は祭りの
やうだけど
海の中では
何萬の
(いわし)のとむらひ
するのだろう。

誰にもいはずにおきませう。

朝のお庭のすみっこで、
花がほろりと泣いたこと。

もしも噂がひろがって
蜂のお耳にはいったら、

わるいことでもしたやうに、
蜜をかへしに行くでせう。

星とたんぽぽ


青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈んでる、
昼のお星は眼にみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。

散ってすがれたたんぽぽの、
瓦のすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。

見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。

極楽寺


極楽寺のさくらは八重ざくら、
八重ざくら、
使ひにゆくとき見て来たよ。


横町の四つ角まがるとき、
まがる時、
よこ目でちらりと見て来たよ。


極楽寺のさくらは土ざくら、
土ざくら、
土の上ばかりに咲いていたよ。


若芽結飯(わかめむずび)のお弁当で、
お弁当で、
さくらを見に行ってきたよ。




*ここに掲載している詩は
「金子みずヾ全集」(JULA出版局)
からの出典です。


詩は、金子みすヾ著作保存会の了承を得て
掲載しています。


転載する場合は、
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